ONLOOKER
(さっきの、なんだったんだろ)
ここは他と比べて、散った花びらが少ないように思える。
咲いた時期が他よりも遅かったのか、黄緑色の芝生を埋め尽くすような花びらの絨毯はまだなかった。
そのままぐるりと太い木の周りを一周してみるが、さっききらりと光ったものの正体や不自然なものは、なにも見つからない。
やはり、気のせいだったのだ。
そう思って、恋宵の歌声がする方へ戻ろうとした、その時だった。
直姫の耳に、はっきりと聞こえた音があったのだ。
────かしゃ、
(……っ、?)
乾いた音が頭上から聞こえた気がして、桜の枝を見上げようとする。
だがそれは、向こうから直姫を呼ぶ真琴の声で、遮られた。
「直姫ー! そろそろお開きだって!」
「あ、うん……今行く!」
そして小走りで戻って行った直姫は、裏庭で聞こえた音やちかっと光ったなにかのことなど忘れ、思い出さないままで、帰路に着いたのだった。