ONLOOKER
「ねぇ、直姫……」
「うん?」
「このこと、夏生先輩たちは知ってるのかな」
「へ、なんで夏生先輩?」
二年生の教室は東校舎だし、彼らは日常的に更衣室を使うような部活動にも入っていないと聞いている。
なにより夏生は男なんだから、全くとはいえないが、あまり関係はないのでは。
直姫がそう考えていることを読み取ったのか、真琴はきょとんとした表情を浮かべた。
「あれ? 直姫は知らないんだ……」
なんとも意味深長かつ意味不明なことを言う。
真琴も少し驚いているような様子に、直姫は戸惑った。
「……どーゆうこと?」
「えっと、僕から説明していいのかな、あとで分かることなんだけど……」
「なんの話?」
「うーん……とりあえずほら、教室行こうよ」
人目を気にしてなのか、説明が難しいのか。
理由はわからないが、今ここで話してくれる気はないようだ。
直姫はすっきりしないものを抱えながら、階段を上る真琴のあとに従った。