ONLOOKER
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ぽんぽんぽんぽん、と一つずつ上がっていく独特の音が聞こえて、直姫が顔を上げたのは、二時間目のあとの休み時間のことだった。
西林寺、佐野、と出席番号が続いている直姫と真琴は、教室での席も前後で並んでいる。
直姫はちょうど、横を向いて椅子に腰かけて、真琴と言葉を交わしていたところだった。
思わずスピーカーを見てしまっている真琴を一瞥してから、直姫もスピーカーの方を見る。
『放課後、生徒会役員は必ず生徒会室に集まるように。用のある者は数分でも構わない。以上』
聞こえてきたのは、二人にとってはもうだいぶ聞きなれてきた、凛々しくよく通る声だった。
実に簡潔な放送だったが、一年B組の教室は、憧れの彼女の声だけでもどよめく。
「石蕗先輩の声ね、素敵!」
「ね、聞いてくださる? 私今朝、石蕗先輩と沖谷先輩が一緒に歩いているところを見たんですの。思わず見とれてしまいましたわ、なんて美しい二人なのかしら……!」
「私なんか今日は、石蕗先輩と目が合いましたのよ!」
「まぁ、羨ましい!」
言葉遣いこそ上品で優雅だが、話している内容はといえば、かなり浮わついたミーハーなものである。
女子生徒の盛り上がりに乗せられて、男子の間でも声があがる。
「僕、剣道部に入ろうかと思ってるんだ」
「やめておけよ、相当キツいって噂だろ」
「でも副会長にお近づきになれるチャンスなんてなかなかないだろ?」
「そういうことなら、俺なら軽音楽部に入るな。あのInoのバックで演奏できるかもしれないし」
「無理に決まってるよ、文化部で一番人気だぞ?」