ONLOOKER
頭の中で素早くそんな考えを巡らせた結果、ここは適当に無難に答えておくのが最善策だろう、という結論に辿り着いた。
直姫は真琴に代わって口を開く。
「いつもとそんなに変わらないよ」
「あら、そうなの?」
「あの部屋でしか見せない顔、なんてことがあるのかと思ってましたのに」
「そうよね、だって夏生様と紅先輩と柏木先輩は、幼馴染みなんでしょう?」
「仲はいいみたいだけど……僕は高校からだから、あんまり」
知らないんだ、と口には出さずに、真琴は苦笑いで伝えた。
すると、彼に話しかけていた一人の女子生徒が、頬をほんのり赤く染めた。
なぜそこで赤くなる、と直姫は思ったが、口にも顔にも出しはしない。
「そ、そうね、佐野くんと西林寺くんは高校からの外部入学なのよね」
「でも、ずいぶん仲がよろしいのね? まるで以前からのご友人みたい」
「あぁ……まあ、同じ苦労を知ってるからね……」
「くろう?」
クラスメイトたちが揃って首を傾げる前で、直姫と真琴は、乾いた笑みを漏らすしかないのだった。