ONLOOKER


「テニス部顧問からの依頼。盗撮魔を捕まえてくれ、って」
「い……、依頼?」


今日は朝からずっと疑問だらけだな、と、直姫は脳味噌の端の隅っこのほうで考える。


「あれ、直姫も聞いてたんじゃなかったの?」
「いえ……真琴に聞いても答えてくれなくて」
「あ、僕からなんて説明したらいいかなあって……」
「どういうことなんですか?」
「なんだ」


目を丸くした聖が、「あのね、」と続ける。


「校内の悪い噂とか、揉め事とか。そういうのが起きた時に解決するのが、生徒会の役目なんだよ」
「悪い噂? 解決って」
「要は校内トラブルなんでも屋。正式なご依頼を通せば、トラブルシューターでもなんでもやりますよ、っていう」
「トラブルシューター……?」
「ほんとになんにも知らなかったんだねえ」


准乃介が、意外そうに言う。
聞けば、特に隠れて依頼を遂行するわけでもないので、近隣の中学高校にもそれなりに知れ渡っていることなのだとか。


「理事長、それも教えたうえで特待進めたのかと思ってたけど」
「全然知りませんでした……」
「自分で言うのもなんだけど、生徒会に選ばれる生徒は、校内での知名度も権力もあるからね。俺たちが動くことが周知になれば、学校の評判を下げる事件も減るし、面白い学校だって宣伝にもなるでしょ。理事長のアイディアで、五年くらい前からはじめたらしーよ?」


准乃介の言葉に、直姫は「やっぱり悠子さんか……」と呟く。

彼女のすべての行動理念は、「面白いか、面白くないか」。
そういう人なのだ。

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