ONLOOKER
とにかく、今優先すべきは、生徒会へと寄せられた盗撮事件解決の依頼である。
問題の更衣室を部活の時に使用している女子テニス部から、いち早く依頼が舞い込んだらしい。
「そんなわけだから。新入りさん、頑張って」
「えっ?」
ひらりと手だけ振っていかにもやる気なさげに言った夏生に、真琴が眉尻を下げる。
子犬のような、という表現がぴったりだ。
「冗談だよ」
「半分本気だっただろう……バカ」
紅が呆れたように言うと、准乃介が「あ、今のバカの言い方かわいー」なんてへらりと笑って、さらに彼女の眉間のしわを深くしていた。
聖が慌てて口を挟む。
放っておくと、准乃介は紅が顔を赤くして怒るまで煽り続けるのだ。
怒った顔を楽しそうに見ているその様子に、実はマゾなのでは、いや一周回ってサドなのでは、なんて噂がまことしやかに流れている。
「はい! はいはい、悠スポに載ってる情報をまとめると、北校舎一階、第二更衣室。東側の階段横のほうね。そこが今回の現場です、と」
「裏庭に面しているな。とすると、盗撮は裏庭から?」
「気付いたのは昨日なのにゃ?」
「うん。えーっと、四時半ごろ、更衣室にいた女子生徒が、外のフラッシュとカメラのシャッター音に気がついて、発覚したらしいね」
「四時半ごろって……俺らが帰った頃じゃないの」
確かに、昨日は放課後すぐに集まって、一時間ほども裏庭でわいわいやっていた。
盗撮犯は裏庭の中央で生徒会が集まっているのをわかっていて、大胆にもその同じ場所でシャッターを切ったというのだろうか。