ONLOOKER
ふと直姫は、昨日の放課後、桜の中にきらりと見えた光を思い出した。
あれは東側の端の桜の木だったはずだ。
恋宵の歌う桜ソングが意味不明すぎて、わざわざござから立ち上がって様子まで見に行ったのだ。
確かに、北校舎端の壁には高い位置に換気用の小さな窓があって、それは開けられていた。
四時半ということはつまり、直姫があの光を見たのは、盗撮魔の存在が気付かれるほんの少し前のことだ。
同時に、木に近寄った時に聞こえた音のことも思い出した。
かしゃん、だとかぱしゃり、だとか、そんな音だったと記憶している。
その時は周りに誰もいなかったので気づかなかったが、あれは今思い返してみると、確かにアナログカメラのシャッター音によく似ていた。
「入れ違いだったのかなー?」
「あ、あの」
「うん? どしたにょろ、直ちゃん」
「自分、昨日、カメラのシャッター音聞いたと思うんですけど」
「え? ……ええ!?」
「フラッシュも見ました」
驚く彼らに、直姫は昨日の状況を説明する。
話してみても、やはりそれは盗撮犯のカメラ以外にありえないという結論に至った。
「そんな遠くのフラッシュ、よく見えたにょろね?」
「目はいいほうなんです」
「フラッシュが桜の中に見えたってことは、犯人は木に登って撮ってたってことですか?」
「更衣室の窓は換気用のが一つだけだし、位置が高いからねえ」
「盲点といえば確かにそうだな……そんなところに誰かが隠れてるなんて、普通思わない」
賢いのかそうでないのかよくわからない犯行である。
見つかりにくいとはいえ、万が一見つかった時に退路がないのだ。
はじめから逃げることは考えていないのか、もしくはなにか思いのよらないルートがあるのか。
だが、どこから撮ったのかがわかったおかげで、もう一つ解けた謎があった。