ONLOOKER


「あっ、あの……!」


紅が焦れてそろそろ最高級のオークのテーブルでちゃぶ台返しでもやるのではないかと思いはじめた時、盗撮犯が、口を開いた。
ぎゅっと握りしめた拳が、膝の上で震えている。

口を閉ざしたままなんてことは絶対にないはず、とぼそりと呟いていた夏生の言葉は、正解だった。


「と、盗撮は……確かに、僕がしましたっ……」


夏生も紅も、なにも言わずにじっと男子生徒を見ている。
無言の促しに、彼は俯いたままで言った。


「で、でも、実は……頼まれた、というか」
「頼まれた?」


准乃介が、あくまで穏やかな口調で聞き返した。
彼は二人の視線のせいで緊張がピークに達していたようだが、その声でいくらか強張りが解かれたのか、少しだけ顔を上げる。


「お、……いや、頼まれてやったんです、その、断れなくて」
「断れなくて、ねえ……つまり脅迫ってこと?」
「いえ、あの、それは……」


彼の泳いだ視線は、肯定を示していた。
盗撮の実行犯は彼だが、彼を脅迫してやらせた人物が他にいるのだ。

部屋の隅の四人は、顔を見合わせる。

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