ONLOOKER
「盗撮って他人にやらせますかね」
「うーん……撮った写真を売る、とかなら?」
「でも、悠綺(ここ)で撮った写真ってすぐにバレちゃうじゃないですか。世間に出回ってから特定されたら……リスクが高すぎますよ」
「それに、お互い弱味握り合うことにもなっちゃうにょろ?」
「じゃあなんでわざわざ……」
紅は眉をしかめて、盗撮犯の目をじっと見ていた。
「いったい誰にやらされたんだ?」
「それは……それは、言えません……」
「どうして!」
「言えないんです、すみません……許してください」
彼を脅迫して盗撮を強要させたというその人物から、口止めされているのだろう。
そうなってくると、男子生徒がわざと連日同じ場所に現れた意味も、わかってくるような気がした。
彼なりのメッセージだったのだ。
自分を捕まえてくれ、そして自分にこんなことをさせている奴を突き止めてくれ、という。
それがわかったからだろう。
紅の表情からはすっきり毒気と怒気が抜けて、困惑したような顔をしていた。
「僕からは言えないんです、わかってください」
「いや、けど……」
「言ってしまったらなにをされるか……! 僕はなにも言ってないですよね!? おねがいします、僕の様子を見て、あなたたちは裏があると思った、そういうことにしてください!」
よほど切羽詰まっているのだ。
目には怯えが浮かんでいた。
必死だが異様なSOSに、紅は准乃介と、夏生に視線を流した。
いったいどうすればいい、と。
夏生は紅に一瞥を返してから、ゆっくりと口を開いた。