ONLOOKER

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東雲夏生(しののめなつみ)は、この学校の生徒会長である。

実質上、悠綺高校全生徒の頂点に等しい存在。
それを彼は理解していたし、利用もしていたし、自分がそれにふさわしいという自負も持ち合わせていた。


悠綺高等学校と悠綺大学附属中等部では数年前から、生徒会選挙の候補者は立候補ではなく完全他薦という、一風変わった方法がとられている。
また例によって例のごとくの、綺村理事長の気まぐれと遊び心だ。
まるで人気投票のようなその選挙で、夏生は、他の候補者を大きく引き離して生徒会長に選ばれた。
そんな選び方では候補者には生徒や教師からの絶対的な信頼と人気が求められるが、彼にはそれだけの人望と、十分見合うだけの能力があった、ということなのだろう。

事実、彼は優秀だ。
完全無欠という言葉がこれほどまでに当てはまる人間もそういないのではないかというほど、頭脳も、外見も、身体能力でさえ、非の打ち所がないのだ。

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