ONLOOKER
「最低だな」
紅が低い声で呟く。
軽蔑の視線でも人は殺せるかもしれないと直姫が感じるほどには、その目付きは険しい。
だが吉村は、その言葉に、胡乱げな顔を上げた。
口は噤んだままで、ただ紅を恨ましそうに見つめている。
その視線に気付いた准乃介が、紅と吉村の間に割って入ろうとした時、真琴が言った。
「ひどいです……そんな卑怯なことしてまで、人を自分の思い通りにしたかったんですか。できると思ったんですか」
生真面目な彼らしい発言だった。
悲しげな声で、眉を歪めて、心の底から被害者と丸井に同情しているような、そんな表情を浮かべて。
だが、まるで聖者のようなその態度が、吉村の心を逆撫でした。
単純に、気に食わなかったのだ。
「ひどい? なにが? 綺麗事言ってんじゃねえよ」
ひどく忌々しげに、顔中歪めて、吉村は口を開いた。
真琴が目を丸くする。