ONLOOKER


記憶にある限りでは、小学校三年生の頃から、学年首席を譲ったことはない。
母譲りの女性的な顔立ちは作り物めいた美しさで、どんな表情でも絵画のようだと表現した人すらいた。

天は二物を与えない。
そんな言葉を鼻で笑って裏切るような存在だ。

東雲財閥――その名前を聞いたことのない人間が今の世の中にいたとしたら、物を知らないにもほどがあると馬鹿にされるだろう。
ホテルやレストランや百貨店、建築や鉄道や旅行会社など、他にも挙げればきりがないほどの事業をかかえている。
その現総帥が、夏生の母方の祖父なのだ。


そんな家柄を知ってか、単に見目麗しい容姿に憧れてか、物腰と人柄に惹かれてか。
とにもかくにも東雲夏生は、この学校の生徒会長に選ばれていた。

実質上の、悠綺高校全生徒の頂点。
いや、もしかしたら教職員だって、彼に楯突ける者はなかなかいないかもしれない。

“それ”を彼は全て理解していたし、利用もしていたし、自分がそれにふさわしいという自負も、持ち合わせていた。

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