異常の兄弟
誰かがぶつかって自分は階段から落ちたんだ。という意識だけはぼんやりと浮かんできた。
うずくまった体を起こし踊り場に目を向ければ若い女が顔を青くしている。
「だ、大丈夫ですか!?」
女は果があんまりに反応を示さなかった事に焦っているようで、今にも泣きそうな顔で叫んだ。
「別に。痛くないよ。」
サラリと言ってのける果に彼女は安堵の息をついたが直ぐにハッとしてキョロキョロと周りを見る。
どうやら、ぶつかった衝撃でカバンに入れていたものが出てしまったらしい。
手身近に散らばったポーチやペン等をひどく焦りながらかき集めていく。
果そんな彼女をしばらく見ていたが、やはり自分には関係ないと建物から出ようとした。
コツン 軽い音がして足に何か当たったのだと気付く。
小さい銀に光る長方体。
「これ お姉さんの?」
ボイスレコーダーを持ち上げ女性に見せれば、一体どんな下り方をしたのだと言いたくなる速さで果の手からそれを奪い取った。
「そ、そう!私のよ!!」
舌をもつれさせながらそれを胸ポケットにしまいこむ。
それから目を見張るスピードでカバンを手に建物から走って出て行ってしまった。