彼女とライブと。【完】
顔面に缶がヒットして唸る兄を尻目に
俺は思考を彼女に向ける。
…なんだか違う世界に
いたみたいだ。
あの声。あのとりまく空気。
でもこの鼓動、は夢じゃない。
きっと彼女の歌は
俺の心にずっと
居続けるだろうし
今夜のことはずっと忘られないだろう。
目を閉じて夜の澄んだ空気を吸い込む。
…彼女みたいだ。
そう呟いてふ、と
笑いを漏らす。
「今日のお前きも。」
「兄貴に言われたくない。」
ふー、と兄はやれやれ、のポーズをする。
まじでこいつ神経逆撫でする天才だ。
「まあ、けーるぞ。」
「…へいへい。」
俺はすっかり静かになった
ライブハウスを一瞥し、
歩きだした。
おわり。