彼女とライブと。【完】
ライブ終了後
*****
21:30。
俺は今、ライブハウスの前にいる。
兄は喉が乾いたからと言って、
飲み物を買いに行っている。
あの後、あの時間が嘘のように
彼女はステージの袖に
帰ってしまったし、
客も流れるように出口に出た。
俺達もその波に流されて今に至る。
「ただいまー。
ほい。裕介の。」
兄が帰ってきて、
俺にコーラを投げる。
ライブハウスの
熱気のせいか。
4月なのに
コーラの缶の回りには
雫が滴っていた。
俺、炭酸苦手なんだけど……
あれ、言ったこと
なかったっけ。
俺はぼーと
そんなことを
考えながら
缶の回りが濡れた
コーラを飲む。
「裕介、あの女に惚れた?」
ふいに兄は俺ににやにやと問いかけた。
確かにあのガン見は
不自然だったよな。
だけど、あの
いきさつを話すのも
なんだか
めんどくさい。
そして兄が激しくうざい。
「どっかで見たような気がしただけだよ。」
俺は適当に流して、
コーラを飲みほした。
ついでにまだにやにやしてる兄の
顔面めがけて缶をスパークリング。