いとしのポテトボーイ
「言うことないのか?」

宮下クンの声だ。

雪沢クンに何を言えと言うのだろう。

この言い方だと呼び出したのは宮下クンのほうだ。

「ヤマほどあるよ」

雪沢クンが答えた。

「なんで安土のこと、そんなふうに言うんだよ?」

「半分は本当のことだろ?」

「だけど半分はデタラメじゃねえか」

「半分が本当なんだからいいじゃねえか」

「みんなが誤解するだろ?」

「辞めた人間が誤解されたって構うもんか」

「何だと?」

「それとも、全部本当のこと言おうか? 教室でシンナーやったり、少しでも気に食わないヤツは徹底的に痛めつけたり。そんな雪沢クンのこと、みんなに喋ろうか?」

「今さら何が目的だよ?」

「俺、オマエには随分とイビられたから」

「だから今さら何だよ」

「オマエにとっちゃ過去のことかも知れないけど、俺にしてみたら深い傷となって今でもずっと残ってるンだぜ。あの頃は情けないほどオマエの言いなりになっていたからな」

「言いなりになってるオマエがトロかったんだよ」

「何だと?」

「なんで安土のこと悪く言うんだよ? 筋、通っていねえだろ?」
< 154 / 202 >

この作品をシェア

pagetop