いとしのポテトボーイ
「そうさ。悪党は安土じゃなくて雪沢のほうさ。ヤツが悪党の親玉で、クラスの連中を、いや、学校じゅうのヤツらを支配してたんだ」

「支配? だって等々力センパイがいたじゃない」

「へーえ。等々力サンを知ってるのか」

「雪沢クンが不良だったことは知ってるよ。だけど宮下クンの言っていることは信じられない。雪沢クンがそんな理不尽なことをクラスメイトにさせていたなんて、そんなこと信用できない。雪沢クンは不良だったかも知れないけど、筋の通らないことをする子じゃないと思う」

「けど現実に俺は雪沢に服従させられていた」

「服従だなんて」

「俺も被害者だぜ」

先にいたグループのひとりが話に入って来た。

「え?」

「俺も」

そしてもうひとり。

「見てくれよ」

彼はシャツの袖をまくり上げて、わたしに腕のヤケドの跡を見せてくれた。
タバコの火を押し付けられた跡。

「挨拶しねえとか、返事が小せえとか、同級生だぜ? 同級生にこれだぜ」

「俺なんか屋上から飛び降りろなんて言われたこともあったンだぜ」

またひとり、話に入って来た。

「それだけは勘弁してもらったけど、そのおかげでボコボコに殴られたよ。ヤクザよりタチ悪かったよ」

「信じられない」
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