いとしのポテトボーイ
その時。

雪沢クンのお尻にサッカーボールが飛んで来た。

「雪沢ッ! いつまでサボッてんだよバカヤロウ!」

 主将が怖い顔でこっちに歩いて来た。

「スミマセン!」

謝ったにもかかわらず、主将は雪沢クンの頬を平手で殴った。

「女子部は何してんだよーッ」

ウチの主将に聞こえるように、男子部の主将が怒鳴った。

「ゴ、ゴメンナサイ」

わたしは涙が出そうになった。

男子部の主将に怒鳴られたことよりも、雪沢クンが殴られたことよりも、奈良岡クンのことが一番悲しかった。

そして、それを心配する愛子チャンの気持ちを思うと、胸が張り裂けそうだった。

その日、日が沈むまで、雪沢クンはグランドの隅で腕立て伏せをしていた。


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