いとしのポテトボーイ
そんなグループと向かい合わせに立っている安土クンとわたしは、当然、登校して来るウチの生徒たちの注目の的だ。

「誰か助けて」とわたしは叫びたかったけれど、みんな、こっちにチラッと視線を向けるだけで、そそくさと通り過ぎて行く。

そりゃそうだよね。

怖いもん。

「翔陽高校に入学しました、ぐらい、挨拶があってもいいンじゃねえか?」

等々力センパイがタバコに火をつけながら言った。

「行こうよ、安土クン」

わたしはもう一度安土クンの腕を引っ張った。

「センパイがこの町に戻ってること、知らなかったスから」

安土クンがペコリと頭を下げて言った。

「そんなもん理由にならねんだよ!」

センパイは火のついたタバコを安土クンに投げつけようとして、左手でそれをつまむと、そのまま安土クンの後方に視線を移した。
 
わたしもセンパイの視線を追った。
 
やはり、奈良岡クンが坂を上って来ていた。

奈良岡クンはセンパイに気付くと、両手をポケットにつっこんだままペコリと頭を下げた。

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