必死こいて桜姫やってやんよ!
「どうしたの、結城さん?」
完全に彼女らが見えなくなった頃、結城さんを見上げて問うた。
「紀憂さん!お怪我はありませんか?何もされてませんわよね?あぁもう!私ってばいつもタイミングが遅いのですわ!」
おーい?シカトかい?
すっごいマシンガントークだ、まだブツブツ言ってるよ。
「…あ!本題は違うのですわ!」
やっと正気に戻った結城さんは色白の頬をポッと染めてあたしを見て言ったのだ。
「紀憂さん、私と一緒に来て下さる?」
めちゃめちゃ可愛い笑顔と共に。
「え、お、おう…良いけど…結城さんこそ忙しくない?
だって結城さんて…」
「それは私が凄いのではありませんわ。
先程はあの乙顔達を帰らせる為に言っただけですの。
親の権力に頼るのは嫌いですもの」
「そっか…」
パッと見、高飛車な感じがするこの子は話してみるとまったく違う内面をしている。
乙顔って…お嬢様が乙顔って言っちゃうのね…。
「さぁ行きましょう!
デートですわ!」
「おわわわわわ、ちょ、ちょい待ち!」
コンパスの長さが違う!
足裂ける!
てか何処に?
そもそもデートするほど仲良くないよね?
とか思ってたらいつの間にか校門。
「結城さん、ちょっと待ってて。
送迎の人に一言言ってくる」
「あらやだ私ったら。
ごめんなさい、私も一緒に行きますわ」
その方がお兄さまも安心ですものね。
そうウインクをしながら言う結城さんはとても美人だ。
結城財閥とまでなれば紀憂の家庭事情まで筒抜けなのだろう。
なのに何も言わず、そこまで考慮してくれるこの人は天使だ、女神様だ。