必死こいて桜姫やってやんよ!
ハンナの家の送迎車に乗りこみ、柔らかなシートに身を投げ出す。
「もぅっ!紀憂さんてばイケメンですわ!
先程のはダメです、あんなのされてしまったら皆オちちゃいますわ」
まだ若干赤みの残る頬に手で風を送りながらハンナがブツブツ言い始める。
んなこと言ったって手が勝手にそう動いたんだ、どうしようもない。
そう言うと天然タラシですわっと睨まれた。
…全然怖くない、むしろ可愛いけどな。
「そういえば、話って何?
本当に経営についての話?」
それだったらむしろあたしが結城家の話を聞きたいくらいだ。
「話、といえば話なんですけれど…」
なんだか歯切れの悪い言い方。
ちょっと言いづらいのかな。
まぁ今じゃなくてもいいか。
「そっか。
ところでさ、」
「なんですの?」
下から覗き込むようにし、少し不機嫌な声色をだし、問うた。
「ハンナはいつになったら名前で呼んでくれるの?」
ぶわわわわ、とぶり返す様に真っ赤になったお嬢様が小さい声で、
「ほら、そういう所ですわ」
と恨めしそうに下唇を上げた。
ふっふっふ、甘いなお嬢様。
あたしは天然タラシじゃなくて自覚済タラシなんだよ。