必死こいて桜姫やってやんよ!
「牛乳飲みたいのか」
「なに言ってるの?」
ーー…寝ていた、というより倒れていた憂依が目を覚ましたのは10分ほど経った頃だった。
鶯張りの縁側が軋む音で身を起こした彼は逆にあたしを膝の上に乗せる。
え、なに、流行ってるの?
ここ最近サキやら瑠璃やらコイツやら野郎共の膝の上に乗ることが多い。
固いから嫌なんだけど。
どうせ乗るなら天使の膝が良いんだけど。
「憂依さん」
そうそう、こんな可愛らしい凛とした声の…
声の……
声……
「ってハンナぁぁ?!」
「はい、紀憂さん」
「…どーゆーこと、何なのコレ」
引き戸の外、正座をしてこちらを見る彼女はバックにお花を背負ってるんじゃねぇかというくらい笑顔で。
ケツも痛いが頭も痛い。
もうよく分からない、いや分かるけど分かりたくない。
とりあえず…
「ハンナを部屋に入れてあげて欲しい」
天使の側に行きたい。
あわよくば天使の膝に乗りたい。
あ、こんな思考してるあたしダメだ、変態だ。
どっかの灰色頭じゃあるまいし。
「…今回だけだぞ」
無表情のなか、拗ねたような顔で憂依はハンナを呼ぶ。
この部屋はこの部屋の主が認めた人しか入れないのだという。
この部屋の主=憂依なワケで。
ってことはこの屋敷=憂依の家ってワケで。
…あ、頭が痛い。
ちょっと冷や汗が出てきたよ、あたし粗相してないよね、っていうか最早普段のあたし粗相してばっかだよね。
…あたし大丈夫かな。