必死こいて桜姫やってやんよ!




「先程も言いましたがずっと見てきましたの。
中等部の頃…一目見た時からずっとですわ」



実は成瀬川学園は初等部からあるお嬢様高。

大体の人が持ち上がりだけど、あたしは中等部からの転入だった。


あの時は自分の事だけでいっぱいいっぱいで、苦しい記憶しかない。

ぶっちゃけそれ以外の記憶が曖昧だ。




「…あたし、何かしたかな」


「ふふっ、私だけの思い出ですのね、嬉しいですわ。

あの時から私は紀憂さんの虜ですわ。でも、下手に私が声をかけてしまったらそれこそ紀憂さんの邪魔になると思って我慢してましたの」



まだ心が成長しきれていない思春期の頃だ。

周りに取り巻きもいただろう、彼女が。

あの頃の紀憂家に声をかけていたら。



…ゾッとした。




「遠目からずっと見てましたわ」




あたしの手を温める綺麗な手

優しい眼差しと柔らかな口角



…きっと彼女はあたしの知らない所で守ってくれていたんだ、たいして知りもしないあたしの事を。




「それなのに、いきなり現れた憂依さんに奪われていたなんて!
しかもどこかの族に攫われた、ですって?バカなんですの?」


「知らん、今は俺のモンだ」


「まぁ!拉致してきたのは誰だとおもってらっしゃるの?!
私ですわよ、わーたーくーしー!」


「でも今俺が捕まえてる」


「私だって手を握ってますわ!」



…おーい、君たち君たち。

君たちは婚約者同士じゃないのかね、喧嘩する相手が間違っているのではないのかね。

普通はコイツに近づくなァ!!ってあたしに怒るところじゃないのかね。




「紀憂さんを離して下さいっ」


「お前こそ離せ」




…ダメだ今何言ってもあたしの意見は却下されそうだ。




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