必死こいて桜姫やってやんよ!




親に伸ばした手を避けられた、その一瞬だけ。





「器用な奴だなと思った。ただそれだけだった」





お前を手に入れたい、と強い衝動が走ったのはその後



そう言った憂依の目は伏せられていて睫毛の長さが際立った。

頭にのる大きい手も止まらずに動いていて。




「会食も終わって空いた部屋の窓を開けて隣の小さいバルコニーを見た。
本当にたまたま入った部屋で、たまたま開けただけの窓だ」



長い睫毛がゆっくり持ち上がる。

眠そうに垂れた目があたしを映す。




「日本人形みたいだったお前の顔が、感情を丸出しにして泣いてた」




ふんわり、ゆるく頬をあげて。




「顔を赤くして、中心に顔のパーツ全部よるんじゃないかってくらいしわくちゃになって」



「止まってきたかと思えば、手を見てまた泣いて」



「どうしようもなく、俺の手中に閉じ込めたくなった」




あまりに優しく笑むからあたしの目はまた熱くなってきて。

端正なはずの憂依の顔が歪んでいく。




「俺には出来ないし、持っていないものだったから。






…お前が欲しいよ、音寧々」






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