必死こいて桜姫やってやんよ!
ちくしょう、狸寝入りか、狸寝入りだったのか。
少し冷静になって至近距離にある奴の顔を睨もうと目を開ければ、美形の極上顔が挑発的な瞳であたしをみていた。
この色気魔神め、その目をやめろぃ。
とか思いつつ、あたしもその瞳から視線を反らさない。
なんだか負けた気がするので。
や、実際は精神的にも物理的にも負けそうだけども。
スゥっ…―と色気魔神の目が細まり、絡まっていた奴の舌が口内をぐるりと回ってから、やっと唇が解放された。
文字通り本当に食われると思った程の原因である彼の唇は、濡れて更に色気ムンムン。
色気魔神改め色気ムンムン魔神はその唇を動かして、低く体に響くような声で言った。
「俺を殺す時は覚悟しろよ」
甘く、酷く甘く、そして射ぬく様な声。
逃げたい、逃げられない、いや逃げたくない
まるで声で縛られている様な訳の分からない感覚。
それに対してあたしが出来た返答は瞬き1つと、触れたか触れてないかくらいの一瞬のキスだけだった。