【短】カラフルな恋物語
外はまだ明るかった。
こんな明るい日でも、彼はいつもあたしを駅まで送ってくれていたことを思い出す。
毎回、欠かさずに。
「いいよ」って言っても、「散歩のついで」だって笑ってたっけ。
けんかしてても、駅までの道のりでもうお互い耐えられなくなって、不機嫌に言葉を交わしたっけ。
彼のぶっきらぼうな優しさが、いまさら体中に沁み渡る。
優しい彼の、決断があたしには拒めなかった。 ……ううん、拒みたくなかった。
あたしは彼を知っているから。
2年も、彼を見てきたんだから。
生半可じゃあ、なかったんだよ。
「 … (バイバイ)」
あたしは振り向かなかった。
でも、最後になるだろうこの道のりを、冴えた目で、しっかりと刻みつけた。
そのとき、バッグの中で赤いランプが点滅していること―― あたしは知らない。
――〈 受信メール一件:長澤 崎斗〉
【 ケータイ 】
~Goodbye Love~