【短】カラフルな恋物語
「なぁに、泣いてんの?」
一番最後の桜の木に触れながら、すすり泣く私に、誰かが背後から声をかけた。
低くも高くもなく――
「一人で泣くなって、約束しただろ?」
よく通る――声
あの頃いろいろあって、弱くなって泣き虫になっていた私。
でもその涙はいつも、キミが拭いてくれて、抱きしめてくれた。
『一人で泣くな』『約束』って言って。
今でも…
キミは私に、泣く場所を与えてくれるの?
六年経った今でも。
ヒールをコツコツ鳴らすようになった、あの頃のままじゃない私でも。
ねぇ……
人並み以上に寒がりで、
ロマンチストで――
人並み以上に優しいキミ。