あの日の僕は。
「……寝不足なの?」
松川が僕の顔を覗き込む。
「ん?全然」
僕は手を小さく横に振った。
「え、でも……」
「あれ、嘘」
「そーなんだ」
「自分でもよく分からないんだけど……」
なんで行かなかったのか。
海里なら絶対行ってた。
ちらっと松川を見た。
松川はカバンから本を出し、続きを読んでいる。
よく分からないけど……。
なぜか松川の隣にいたいって思った。
景色は次々と流れていく。
あんなに都会だった風景に、少し緑が出てきた。