あの日の僕は。



顔を上げて、声を発した人を見てみた。


「…………!」


僕は驚いて声も出ない。


それは当然。


その声の人は、僕とうりふたつだったのだから。


「僕……?」


「違う。俺は君じゃない」


声までそっくりだ。


まるで鏡を見てるみたい。


「……で、君は陸也?」


「あ……あぁ」


なぜアイツは僕の名前を知ってるんだ?


初対面だろうに。


「今何してんの?」


「家出」


素直に答えた。


「おぉ!そりゃ好都合!」


アイツは小さくガッツポーズをした。


なんか、卓志に似てるな。



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