あの日の僕は。
そう言って僕はケータイを閉じた。
「……よし、視察開始だな」
隣で電話の内容を聞いていたらしい海里はニヤリと笑う。
そして僕のリュックから荷物を取り出し始めた。
「何してんだよ」
人の荷物を、勝手に。
「このリュックに俺の荷物を入れて家に行く。手間が省けるだろ?」
確かに大きい荷物をいきなり持っていると不自然だ。
だけど家出してたなら別に変じゃない。
だから海里は昨日、家出を好都合と言ったのか。