14日の憂鬱
泣きそうな感覚。鼻の奥がツンとした。



『ありがと』




男の子の前で泣いたりするのは初めてだった。



本当はもっと恥ずかしいものかと思っていたけれど、そうでもなかった。



ばかじゃねぇの~と、からかわれるかとも思ったけれど、そうでもなかった。




……や、きっと永井の前、だからかもしれない。


彼は女の子の涙を無下に笑ったり茶化したりするような人じゃない。




そんなことに気づくと、笑顔がこぼれる。




『……泣くのか笑うのかどっちかにしろよ』


永井は苦笑しながら、私の目の前に立った。





そして、涙が浮かぶ私のまぶたにそっと指を伸ばす。




何でだろ。






今日の永井ってば、すっごい。




すっごいかっこいいんだけど。





元々背も高いし筋肉もあって、日に焼けたその肌もかっこいいんだと、改めて感じた。






『……やだ。紳士だね、永井。意外と』




少しそんな風にからかうと永井の笑いを誘ったみたいで、永井が軽く微笑んだ。



その、初めて目にした男らしい微笑みに、心臓を掴まれる。








ホント、どうしちゃったの、永井。





何でそんなにかっこいいの。





それに、ホントどうしちゃったの、今日の私。






すっごくドキドキしてるんだけど。







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