14日の憂鬱
「さと……」



永井が私の名前を呼ぼうとしていたその口を、私は強引に口付けた。






窓がまたあの時と同じように少し開いていて、外から教室へと風が吹き込んでくる。


雪も一緒に入ってきて、その雪が頬で溶けて冷たい。





雪のように永井の気持ちも、私に溶けて。






「……どうして」


唇を離して、私はうつむきかげんで尋ねた。





「どうしてあの時、ゴメンって」



『……ゴメン』




あの時の、冷え始めた教室に落とされた永井の台詞がこだまする。



「悪かったって……っ」



『悪かった……』






そう、永井の口が動くのを黙って見ていたあの時のことを思い出す。





< 43 / 52 >

この作品をシェア

pagetop