俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~
「………」


失恋してからこの数日


春馬もなぜか音信不通で俺は誰にも気持ちを吐き出せなかった。


おっさん教官の言葉が胸に染みて

俺は不覚にも涙がこぼれそうになった。


「…………っ」


俺はぐっと涙を飲み込んだ。



おっさん教官はもう一度耳をほじる。


「だけどいかなる理由があろうとも、殴るのはいかんなぁ」


「……すいません」


頭を垂れる俺に


「ん――…」


おっさん教官は顎を触りながら考える素振りをみせる。


「まぁ…今回だけは少し派手な喧嘩という事でおおめに見たったるわぁ。」


「……はい」


「じゃあ水梨はもう下がっていいぞ。次は小森だな」


先生が内線でどこかへ連絡を入れるとほどなくして


口に絆創膏を貼った小森がやって来た。


俺は立ち去る寸前


すれ違いざまに小森を睨んだ。


「っ………」


小森はそんな俺から逃げるように視線を反らした。


「おい、水梨」


俺が教官室からでる直前、おっさん教官は俺を呼び止めた。


「誰にでも失敗はあるんだ。好きならきちんと話し合えよ」


「…………」


俺はおっさん教官に頭を下げると教官室を後にした。

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