俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~
「…………」


俺は唇を噛んだ。


本当は…話しされんのも嫌。


無視しろなんて言ったらワガママになる?


だけど加奈子ちゃんの視界に
小森が入るだけでも本当は耐えらんねぇんだ。


「とにかく…小森には気をつけて」


俺はなんとか自分の欲望を抑えながらそう吐き出した。


「………」


「加奈子ちゃん?」


「分かんない…」


「え…?」


俯いた加奈子ちゃんの顔を覗きこむと


加奈子ちゃんは泣きそうな顔をしていた。


「ヒロキくんが…よく分かんない…」


「…………」


「自分は他の女の子とキスしちゃうのに…なんで私にばっかり注意するの?」


「…それは……」


「私はこんなにヒロキくんが好きなのに…なんで信じてくれないの。」


加奈子ちゃんは首にかけていたタオルを俺に投げつけた。


「それに…私はまだ別れたつもりなんてなかったのに……っ」


加奈子ちゃんは涙を飲み込むように黙ると


そのまま俺に背中を向けて歩き出した。


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