俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~
「…やめてください」
静かな教室から
ハゲ桂以外の声が聞こえた。
予想外の声に、俺と春馬はもう一度顔を見合せる。
するとまた聞こえてくる小さな声。
「王子くんは…優しいです」
シーンとした教室に
小さいけれどはっきりとした声。
「王子くんは…不器用なだけで…本当に優しいし真面目なんです」
「……………」
声の主は
顔を見なくてもわかった。
「王子くんをちゃんと見ようとしないのに…これ以上悪く言うのはやめてください…」
「…………」
「…………」
―――まるで
なにかの魔法で、時間が止まってしまったんじゃないか。
そんな静寂の中で、俺と春馬も固まっていると
「お…いや…何も泣かんでも良いだろう?」
ハゲ桂の少し慌てた声が聞こえてきた。
――え?
愛子ちゃん泣いてんの??!
俺がドキドキしていると
「す…すみません。私も王子くんをよく知るまではいい加減だと思っていました。だけど本当は凄く努力もしているんです。」
また訴えるような愛子ちゃんの声が聞こえてきた。