俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~
「王子くんは誤解されやすいけど…本当に優しいんです」


「……………」





そこでまた静かになってしまった教室。


俺は後ろのドアからこっそりと教室の中を盗み見た。


小さな窓からは


後ろの席に小さく座る愛子ちゃんの細い肩が見えた。





こんなに静かな教室で――…


1人ハゲ桂に立ち向かった愛子ちゃん。


春馬の為に。


それを言うのに、どんだけの勇気がいっただろう。


どれだけの想いを溜め込んでいたんだろう。


それを想像すると
胸の奥がジンと熱くなった。


春馬……


俺が春馬を振り返ると


春馬も俺と同じ思いなのか、顔を赤くしてどうしたらいいか分からないという表情をしていた。


「………っ」


そんな春馬の表情を見て、なぜかまた胸が熱くなる。


親友とその彼女の想いにこんなに感動するとは…。


春馬、良かったな。



動けないのか突っ立ったままのバカ春馬の代わりに


ここは俺が助けてやるよ。


俺はそう決心して息を軽く吸い込んだ。



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