俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~
「つーか…そういう加奈子はどこに行きたいとか希望あんの?」


シャーペンをくるくる回しながら俺は加奈子を上目遣いで見る。


「私はA南大学が第一希望だよ」


「へぇ?初耳」


加奈子の言葉を聞いて


俺は第一希望の欄にA南大学と記入した。


「ちょっとぉ…真面目に考えてよ」


「なんで?これじゃ駄目?」


「私は保育士になりたくてこの大学にしたの。ヒロキは?」


「俺の第一理由は加奈子」


ニコッと笑う俺に加奈子は呆れた顔をした。


「A南を選ぶそれ以外の理由は?」


「ん~…わかんね。てかA南大って名前しか知らない」


「……………はぁ」


そんな俺に、加奈子は大げさにため息をついた。


せっかくの貴重な時間に重い空気が漂う。


だから進路の話なんてしたくなかったんだ。


「はい、進路決定。あとはゆっくりしようぜ?」


俺はシャーペンを置くと加奈子の機嫌を取るようにPSのコントローラーを引っ張りだした。



< 175 / 280 >

この作品をシェア

pagetop