俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~
テニスコートの中では、順番にボールを打つ加奈子がいた。


加奈子はバスケも下手くそだったけど


お世辞にもテニスも上手いとは言えなかった。


打ち返すボールがどこかへ飛んでいくたびに謝る加奈子。


「まじ、バレー以外出来ねぇのかよ」


必死な加奈子に小さくつっこむ。


それでも加奈子は楽しそうな笑顔で授業を受けていた。


そんな加奈子を見つめながら、俺は感じていた。


俺は加奈子と話せないだけで、こんなに凹みまくってるのに


なんで加奈子はいつもと変わらず楽しそうにしてるんだろう。


加奈子が俺を想う気持ちより


俺が加奈子を想う気持ちの方がずっとずっと大きく思えた。




「加奈子…」


加奈子にとって俺はどんな風に見えるんだろう。


何を怒ってんのか分からない。


俺が不真面目だから?


エロいから?


だけどどれも、昨日今日始まったことじゃない。


俺は元々こういう風だった。


つーか俺がいい加減すぎるから


優しい加奈子もさすがに愛想を尽かしたのかもしれない。


俺は渡り廊下の手すりに腕を乗せるとそこに顔を埋めた。


寂しい


虚しい


俺ってどんだけ加奈子に依存してんだろう…


情けない自分ごと消えてしまいたくなった。


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