俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~
春馬に何も言えないまま


それ以降、その話にはどちらからともなく触れなくなった。


だって、今回ばかりは行くななんて言えねぇよ。


だけど、頑張れなんてもっと言えない。


なんて言えば良いのか俺は分からなかった。







校庭の隅に紫陽花が咲くと気だるい梅雨がやってきた。


じめじめと湿気を含んだ校舎の中で、期末考査に模試の毎日。


それが終わる頃には


いつしか予備校の窓の外で蝉が鳴き始めていた。


もうすぐ俺と加奈子が始まった夏がやって来る。









連日、余裕で30℃を越える暑さにゆらめくアスファルトと蝉の声。


青い空には入道雲が高くそびえ立つ。



高3の夏休みが始まった。


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