俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~
奇跡の合格から数日



気付けば卒業まであと1週間を切っていた。


「はぁ~マジでさみ」


教室には今日もやはり数人の生徒しか登校していない。


ガランとした自習中の教室で、俺はストーブの前を独占しながら解放感に満たされていた。


試験直後には感じなかった
“受験が終わった”という実感。


それが合格通知以降、一気に訪れた。


教室には受験を控えた奴がたくさんいるため露骨には喜べないが


未だに思う。


マジで夢じゃないだろうかと。


ちなみにあの日、加奈子にも合格通知書が届いていた。


俺の気分の良さはこの3年間で最高クラスだ。


努力が結ばれるというのはこんなにも気持ちが良いことなのか。


同時に


ここにきてようやく、残りわずかな高校生活の切なさを噛みしめることができていた。


忙しさで感じていなかった寂しさや名残惜しさを感じる。


卒業したくね~…


俺は教卓にもたれながら前にいる春馬を見た。


春馬はストーブの前の席で今日も突っ伏して寝ている。


……疲れてんのかな


卒業式を終えたら、春馬はその足で日本を経ってしまうらしい。


ずっと隣にいた春馬。


春馬が居なくなるなんて未だに信じられねぇし。



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