俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~
冬の海は想像より寒かった。


海につくと冷たい風がびゅうと吹いた。


「さみ~!」


俺は軽くはしゃぎながらマフラーをきつく巻きなおす。


「も~ほんと気紛れなんだから」


加奈子も鼻が赤くなっている。


俺はへへっと笑うと砂浜に座り込んで砂いじりを始めた。


うん、この感じだ。


なんか青春してる気になる。



「教室とかうざいと思ってたけど最近は教室行ってもガラガラで、なんか淋しいよな~」


「みんな試験でいないもんね」


加奈子も隣に腰をおろしてくれた。


「は~もう卒業かぁ…」


そんな俺の言葉に


ずっと無言だった春馬が突っ込んできた。


「おい、辛気くせぇぞ…」


突っ立ったまま寒さに腕を組んでいる春馬。


春馬の少し長めの黒髪が冷たい風になびいている。


相変わらず…ムカつくぐらいカッコいい。


俺とは違った渋さがコイツにはある。



「お前も今日ぐらいは、ちょっとしんみりしようぜ」


俺は笑いながら、そんな春馬に砂を投げつけた。


「しんみりとか…お前のキャラかよ」


春馬は砂を避けると、俺に砂を蹴り返してきた。


「おっと…!」


俺はそれを避けるようにして、大袈裟に砂の海に転がった。



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