俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~
はぁ?寒い?


春馬の一言でまた俺の中のムードが壊される。


「なんでお前はそんな普通なんだよ~」


「…別に卒業したって一生離れる訳じゃねぇだろ」


「そうだけどよ~」


「卒業なんてただの儀式だろ。2日後3日後も俺は俺だ」


春馬は平然と言い切った。


「……………」


確かに理屈ではそうかもしんねぇけどさ。


違うじゃん?


俺は寝たままため息をついた。


「なんかそう言われるとせっかくのムードが消えていく…」


「悲しいムードとかわざわざ作んなよ、辛気くせぇ」


「え~?マジで~?」


「大体悲しんで良いことあんのかよ」


「……………」


それもそうだけどさ…?


なんつうかコイツには情緒とか感受性とかがないんだろうか。


こんなんじゃ、愛子ちゃんもさぞ苦労してんだろうなぁ。


そう思うと、完璧だと思っていた春馬も案外穴があるんだと思った。


女心とか、ぜってぇ理解してなさそうだし。


てか俺もわかんねぇけど。



そして俺は笑った。


爆笑した。


そんな俺を見て、春馬の口元もゆるんだ。



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