俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~
――卒業式前日







今日は体育館で軽い予行演習があるだけで、授業はなかった。


放課後の教室


俺と春馬二人だけの昼下がり。



「制服ももう明日で着ること、なくなるのかぁ」


俺は頬杖をつきながら、自分の机の右端をガリガリと削っている。


右隣には机に腰をかけたセーター姿の春馬。


「別に…明日以降も着たけきゃ着ればいいだろ」


なんて、あくびをしながら


相変わらず、春馬は情緒の欠片もない。


そういう問題じゃないんすけど~


だけどまぁ、卒業後も制服を残しておく意見には賛成かな。


「コスプレイね」


俺はにやりと笑った。


そんな俺に春馬は呆れた顔を向ける。


「つーかお前なにしてんの?」


机に腰をかけたまま、春馬が俺の机を見た。


俺は彫刻刃代わりのシャーペンを止めると自慢気にそれを見せた。


机には“ヒロキ参上!”と掘ってある。


卒業前に、こうやって名前を残すのは俺の昔からのルールだ。


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