俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~



卒業式なんて


大したことないと思っていた。




むしろ昔の俺は学校なんて行きたくなかったし


授業だって単位ギリギリだったし。



春馬がいたから退学はしなかっただけ。


高校になんの意味があんのかなんて、わかんなかったし。



てか人生ってなに?


てか…俺ってなに?



だけどそれを考えるほどの熱意すらもなくて


うざい思考から逃げるように、劣等感から逃げるように


俺は毎日ただ遊び呆けていた。







だけど――…


俺は校門から通いなれた校舎を振り返る。


青空にはえる学舎。


こんなに晴れやかな校舎を見るのは初めてだ。



これから二度と生徒としてここに通うことも


ダルい授業をサボることもないんだと思うと


ダルかったはずなのに
無性に寂しくなる。


気づかぬ間に、思い出が溢れ過ぎていて



カーテンが揺れる教室。


弁当を食べた屋上。


サボりに使った第二音楽室


嫌いだったマラソンをしたグラウンド


よく、失って初めて気付くものがあるって言うけど


去る時になって初めて、その全てがどれだけ貴重だったのか気付く。



劣等生だったけど

大した事もしてこなかったけど


この3年間は俺にとっての宝物になっていた。

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