俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~

屈折した心

夕方になり

俺は加奈子ちゃんを送りながら一緒に帰った。


駅に向かう帰路が薄いオレンジに染まる。


「王子くんの家凄かったね」


加奈子ちゃんは今日の感想を少し興奮ぎみに語る。


そんな加奈子ちゃんに俺は何も言えなかった。


「王子くん楽器も出来るとか言ってたけど何が出来るの?」


「………」


「ヒロキくん…?」


加奈子ちゃんは黙る俺に少し首をかしげた。


俺の苛々した空気に少し不安な顔をする加奈子ちゃん。


「あ―…ピアノだっけかな?」


俺は適当に答えた。


「あ、そうなんだ」


加奈子ちゃんはそんな俺に苦笑いした。


「……………」


「……………」



線路が近い住宅街で時折電車が走る音が聞こえた。


空は水色とオレンジのマーブルでなんとも言えない色をしている。


苛々して悲しくて

だけどそれがどこから来ているのかも分からなくて



まるで混濁した俺の心みたいだ



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