俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~
加奈子ちゃんを駅まで送り届けた俺は


自分もシャワーを浴びたあと、部屋でアルバムを聴いていた。


スゲーいい曲ばっかなのにため息ばかり出る。


俺はアルバムのジャケットを見つめながら


さっきから加奈子ちゃんのことばかり考えていた。


どうしたんだ俺は。












――それから数日間


俺は加奈子ちゃんのことばかり考えていた。


いつの間にか愛子ちゃんの失恋の痛みはどこかへ消えていた。


代わりに加奈子ちゃんと喋ったゲームの話や音楽の話。


餃子を食ったことやバスケの事


そして、明るくさっぱりした
加奈子ちゃんの時折見せる女の子らしさ


そんな事ばかりを思い出していた。




加奈子ちゃんはそれからも相変わらず優しかった。


あの日の告白を未だにうやむやにしたままの俺なんかに対して


責めることもなく、ただ何気なく俺を励まし見守ってくれる。


むなしく寂しい夜に加奈子ちゃんとやる他愛のないメールにどれだけ救われたのか。





いつの間にか俺の中で


加奈子ちゃんはかけがえのない存在になっていた―――…

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