ドッペルゲンガー
保険室では三上先生がパソコンのキーボードを忙しく叩いていた。
荷物を下ろし丸椅子に腰かけた。
すると三上先生はこちらへ向き直った。

「ドッペルゲンガーの正体についてなんだけど、未来から来た自分っていうのが有力な説らしいわ。」


第一声からドッペルゲンガーという単語が出てきたことに驚きつつも、海斗は答えた。


「でも先生、未来から来たら年をとってるはずじゃないですか?
でも、駅前に現れた偽者はオレと全く変わらなかった。」


三上先生はウンウンと頷きながら質問に答えた。


「そう遠くない未来から来たとすれば?例えば1ヶ月後の未来から来れば、今の西村君とさほど変わらないでしょ?」


「一体何の目的で?」


海斗の疑問は短いが、たしかに的を得ていた。


「それが謎なのよ。」


三上先生は再びパソコンのディスプレイへと向き直った。


すると三上先生の携帯が鳴り始めた。


「あゆみちゃんか。どした?」


あゆみちゃんとは高岡先生のことだ。高岡先生はひそかに三上先生のファンなのだ。その証拠に最近三上先生を真似て髪を巻いたところ、一部の生徒から彼氏が出来たなど噂が出たため、断念したという話がある。

「それは確かなのね、わかった。じゃね〜お疲れ。」

つい今までかわいい声でトークしてたかと思うと、今度は打って変わってなにやら険しい表情だ。


「どうか‥しましたか?」


「それがね、西村君のそっくりさんは捕まったわけじゃなかったの。」


「へっ?じゃあなんで警察署に?」


意外すぎる新事実に海斗の心はてんやわんやだ。
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