ドッペルゲンガー
「夜に駅前の路上でぼんやりつっ立っていたとこを、駅前派出所のおまわりさんが見つけて派出所まで連行していったって話よ。
たまたまその現場を見た清水くんが学校に通報したんだって。
いちお近くの警察署で取り調べを受けたらしいけど、すぐに釈放されたらしいわ。高岡先生の情報元が事務課の井上さんだからねぇ。結論から言うとはやとちりね。」


事務課の井上さんと言えば事を荒だてるので有名だ。要するにトミーみたいな人だ。
しかし、トミーのやつ通報してたのかよ。まぁ昔から『ちくり魔トミー』と呼ばれてたからな。


「じゃあ今偽者は‥。」

三上先生は申し訳なさそうな顔をしながら答えた。


「あなたのお家にいるみたいよ。」


海斗は愕然とした。家にいるということは、母は偽者を我が息子として受け入れたということになる。


産みの親でさえわからないそっくりさんなんて、もうドッペルゲンガーとしか考えようがない。


「あらら、相当なショックのようね。まぁ無理もないか。」


正直泣きたかった。今まで迷惑ばかりかけ、親不孝の割合が過半数を占めていたが、それでも心の中では母マンセーだったのだ。


「オレ、みず知らずの男にかあちゃんのおっぱい吸われてると思うと悔しくて悔しくて、うぅ‥。」


「ちょっとあんた、だいぶ主旨が変わってきたわよ。おかしな子ね。まさかまだお母さんのおっぱい吸ってんの?」


「‥‥まぁ時々。」


海斗の答えに三上先生は思わず吹き出した。
机をバンバン叩いて涙を流している。こりゃ相当ツボに入ってるな。


すると突然、保険室のドアが開いた。
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