ドッペルゲンガー
「オレに親父なんかいない!トミー、いい加減にしろ!」


「西村君!彼は清水君じゃないわ。」


三上先生は小声で海斗に告げる。


「どこからどうみても清水君ですよ。」


同じく、海斗も小声で返した。


「西村君、ちゃんと話を聞いてたの?」


三上先生は呆れ果てている様子だった。


「さっきから何をコソコソ喋ってるんだ?
海斗、お前にも父親はいたんだよ。
お前の記憶から父親の記憶だけ、綺麗さっぱり抜きとられているだけで、父親はちゃんといたんだ。」


「先生、今の話信じますか?」


「さぁね、それより心当たりはないの?あなた自身の問題でしょ?」


「コラー!!信じる信じないの話じゃないだろ!
海斗、真面目に聞くんだ。お前は去年の春まで父親の記憶があり、ちゃんと家族3人で暮らしてた。
ところがその一ヶ月後、つまり去年の今頃、事件は起きた。」


「でも清水君じゃ説得力ないんだよなぁ。」


「そうよね‥とりあえず清水君をベッドに運びましょうか。」


「ちょっとお前ら!ふざけてんのか?
こっちは真面目に話してるのに、なんだその言い草は!私を疑ってるのか?」


トミーはかなり怒っているようだ。


「じゃあオレのかあちゃんの名前は?」


「真奈美だ。西村真奈美。」


「それくらい清水君でもわかるよ。」


三上先生はというと、必死で笑いをこらえていた。
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