ドッペルゲンガー
やっとのことで稲岡先生の体を廊下から教室へと運びこんだ。
すると、反対側のドアから教室を出ていく海斗の姿を三上先生が捉えた。


「ちょっと、待ちなさい!みんな西村君を捕まえて!」


しかし時すでに遅し、海斗はもう走り去っていた。


「アノ子、絶対に許さないわ。」


三上先生は鬼の形相だ。


「あの、とりあえず他の先生方の力も借りて保健室まで運びません?
西村君も待ってるでしょうし。」


高岡先生がおそるおそる提案する。


「私は遠慮しとくわ。
今、西村君の顔見たら殴っちゃいそうだもの。
私がこのクラス見とくから高岡先生が行ってくれない?」


三上先生の言葉に高岡先生はうなずくと教室を出ていった。


「さぁ、みなさ〜ん!静かに自習してね。」


生徒達は二匹の鬼をまのあたりにして、いつも以上に真剣に自習に取り組むのであった。


いっぽう、海斗はトミーをやっとのことでベッドに戻した。


「悪気はなかったんだ、許してくれよ。」


海斗はトミーに詫びをいれた。
すると、保健室のドアが勢いよく開いた。
海斗はとっさにベッドの下にもぐりこんだ。
カーテンで仕切られているのでなんとか身を隠せそうだ。
部屋に足音が響く。一体何者だろうか?
海斗の額に汗がにじむ。


すると、足音が止まりカーテンが勢いよく開いた。
突然の出来事に声が出そうになったが、なんとかこらえた。
ベッドの下からは足が見える。学生服を着ている辺りから先生でないことがわかる。
するとだんだんと膝が降りてきた。
バレたか!?海斗の心臓はバクバクいっている。


「あなた、何してるの!」
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